コラムあるいは雑文

主人公の座は誰の手に(笑)    - 05/02/07 -

今回のコラムはほとんど私の想像です。特に根拠がある話ではありませんが、ご容赦ください(汗)。
と、前置きで言い訳しておいて・・・(笑)

「マリみて」のルーツは「銀杏の中の桜」です。
最初にこのエピソードが雑誌コバルトに掲載された時、作者の頭の中に「これほどの長いシリーズ」になる構想があったかどうかは、解りません。
ただ、少なくとも「この魅力的な舞台設定を一回で終わりにする」つもりは毛頭なかったでしょう。
「銀杏の中の桜」(原題:マリア様がみてる)の主人公は乃梨子ちゃんです。リリアンという特殊な世界の中にひとりだけ(読者と同じ)一般人としての役回りです。ただし、一般人ではありますが、平均的とはいえません。途中入学で生徒代表になるぐらいの成績優秀者でもあります。
シリーズの中で、「銀杏の中の桜」以降の乃梨子ちゃんの存在感は残念ながらあまり大きくありません。祐巳と由乃さんの妹問題が片付かないせいもありますが、白薔薇は影が薄くなっています。
どうやら、乃梨子ちゃんは単発の主人公には申し分ないのですが、長いシリーズの主人公には向いていないようです。
そういうこともあって、作者はシリーズ開始を半年巻き戻したのかもしれません(想像に過ぎません)。

さて、その代わりというわけでもないでしょうが、シリーズ主人公に抜てき(笑)された祐巳はというと「銀杏の中の桜」では存在の気配すらありません(BGNで補完されましたが)。
祥子さまと令さまは登場していますが、単に「ちょっと恐い上級生」という感じです。
「銀杏の中の桜」の段階でしっかりとしたキャラ設定がされていたのは、「乃梨子ちゃんと志摩子さん」そして「瞳子ちゃん」ぐらいだったと思われます。
瞳子ちゃんの性格の二面性がこの段階で設定されていたかどうかは解りません。ただ、瞳子ちゃんは「いかにもサブキャラ」という感じです。物語に動きを与えるのには便利ですが、読者を共感させるキャラではありません。
ここから半年さかのぼるにあたって、自由に作れるキャラは「祥子さまと令さまの妹たち」です。そこで、より平均的な(読者と同じ目線の)キャラでしかもリリアンの世界でも平均的なキャラとして祐巳、その親友になるキャラとして由乃さんというふたりのキャラが作られたのだろうと想像できます。祥子さまと令さまはそのふたりの姉として作られたのでしょう。
(初年度の三薔薇さまは、いわゆる上級生のイメージとして作られたと想像します)

そこで、気になるのは瞳子ちゃんです。「銀杏の中の桜」の段階で存在し、未だその実態が謎だらけというのもかなり特異なキャラといえるでしょう。
私は、可南子ちゃんが登場するまでは「作者は初期段階から祐巳を瞳子ちゃんの姉として想定していた」と思っていました。
正確には可南子ちゃんが登場してもそう思っていました。可南子ちゃんは「涼風さつさつ」だけのキャラだと思っていましたから。で、その後の再登場によって「あれれ?」と(笑)。
それでも「作者が祐巳というキャラを作った時は、瞳子ちゃんと姉妹にするつもりだった」と思っていました(その後、作者が気が変わった可能性を含みます)。
でも、何度も読み返しているうちに微妙に違うような気がしてきました。
それは「作者は祐巳と瞳子ちゃんを姉妹にしようとしているのではないか」という考え方です。いきいきとしたキャラは、創作上のキャラとはいえ作者の意志を越えて動き出すものです。つまり、祐巳の妹がなかなか決まらないのは、作者が出し惜しみしているのではなくて「祐巳がなかなか決めてくれないから」ということではないでしょうか。作者は、あの手この手で妹を決めさせようとしているのに、肝心の祐巳が「まるで他人事」という感じなのです。作者は、読者同様にやきもきしているかもしれません。

しかたなく(作者は)祥子さまに憑依して「妹を作りなさい」と言ったのでは(笑)。
地引き網を引いている場合ではないよ、祐巳ちゃん。
(なんだか、コラムタイトルとあわない内容になってしまったような・・・まあいいか)
2005/02/07 03:13:55〔投稿者:アルス〕
 今野先生作『夢の宮 〜叶の果実〜』にも(それこそ『マリみて』が世の中に出回る前に生み出された作品です)志摩子さん(摩や)と乃梨子ちゃん(り果)、そして瞳子ちゃん(桃弧)の原型ともなったキャラが活躍しています。 (私の「想像ごっご<笑>」では志摩子さん、乃梨子ちゃん、瞳子ちゃんの3人の前世はきっと『夢の宮』に住んでいたと勝手に動かしていたりしますが・・・ でも、「桃弧」は「り果」が作り出した幻なので少しストーリーがおかしくなりますけどね しかも、『マリみて』と『夢の宮』との関連性は全く無い訳ではありますが)
 私としては祐巳ちゃんの妹は「先着順」を選んで欲しいわけですが、私自身はアニメで『マリみて』の存在を知った訳ですので(「運命の出会い」<笑>)、これまた複雑だったりします (いわゆる矛盾って事です) でも、瞳子ちゃんを選ぶにしても、可南子ちゃんを選ぶにしても、決して当て馬として作り出されたキャラでは無いという事はある程度予測してはいますけどね・・・ (二人とも「リリアン女学園」の矛盾を断ち切ってくれるのに必要不可欠な駒だとおもいますからね)
2005/02/08 03:39:33〔投稿者:管理人〕
瞳子ちゃんに似たキャラが「夢の宮」にすでに登場していたという話は「マリみてDB掲示板」で聞いてはいたのですが、不勉強ながら私は未だ「夢の宮」を読んでおらず、詳細は知りませんでした。志摩子さんや乃梨子ちゃん(に相当するキャラ)も登場していたのですね(笑)。
2005/02/08 22:46:01〔投稿者:アルス〕
『夢の宮 〜叶の果実〜』は今となっては注文出来ない状態なのでとても残念なのですが(この巻だけ読んでも面白い話なので・・・)、私は図書館で借りて読みました。 (『マリみて』の原作との出会いも図書館だったので、新刊「インライブラリー」はとても新鮮さを感じつつも、懐かしくも思いましたね。 (だんだん、コラムと関係無くなってきまして申し訳ありませんです)  次巻の主役は是非、1年椿組(3人娘)にスポットを当てて頂きたいと思いますね    
2005/02/10 06:04:12〔投稿者:バルミラ〕
 後に「銀杏の中の桜」になる、読みきりの「マリア様がみてる」は、どう言う経緯で作られたのか。
 私はむしろシリーズの構想が先にあって、そのシリーズの世界観が読者に受け入れられるかどうかを試すために、読みきりの方は書かれたのではないかと思っています。
 実際、あるライトノベル作家は新しいシリーズを始めようとした際、企画書を編集に持っていきましたが、それだけでは足りずパイロット版として短編を一本書いて雑誌に載せることになりました。
 「マリア様がみてる」シリーズも今でこそ人気小説ですが、その舞台設定やストーリーコンセプトが当時のコバルトの読者層に受けるかどうかは、なかなか不安だったのでしょう。
 登場人物たちの名が「夢の宮」と重なるのは、既にある今野緒雪のファン層を取り込むためだったかもしれません——あるいは単純に名前を考える時間があまりなかったか——。
2005/02/11 01:30:10〔投稿者:アルス〕
>バルミラさまへ キャラの名前に関しては『夢の宮』のあとがきに詳しく載っているのですが、この本はそこそこ大きい図書館にでも行かない限り、置かれていないのが本当に残念です。 ストーリーはとても秀逸(少し切ない話ですが・・・)なので、機会があれば一度お読み下さると私も嬉しく思います。
2005/02/11 05:02:17〔投稿者:管理人〕
>バルミラさま
>私はむしろシリーズの構想が先にあって
それは私も感じます。設定自体がシリーズ向きで一回だけの読み切り用とは思えません。ただ、(銀杏の中の桜では)祐巳が登場しない点や祥子さまと令さまのキャラに厚みがない点から、できていたのは「リリアンという舞台設定」だけだったのではと想像しています。
2005/02/14 12:27:23〔投稿者:くりくりまろん〕
>ワトソンさま
2005/02/14 12:52:54〔投稿者:くりくりまろん〕
>できていたのは「リリアンという舞台設定」だけだったのでは
に関連して、それでは「福沢祐巳が主人公になったとき」はいつかを考えると《無印》より少し遅れて『ロサ・カニーナ』の巻ではなかったかも知れないと思っています。志摩子・乃梨子以外にも焦点を次々にあてた群像小説のようにもできたと思います(実際、そのような面もありますね)。しかし「長き夜の」の題材、「ロサ・カニーナ」で「妹とは?」と祐巳が考えるシーンで祐巳がマリみての世界の中心人物であることが宣言されたのではないかと。…今野先生の構想は推し量るべくもないのですけれども。
2005/02/14 17:23:54〔投稿者:バルミラ〕
>アルスさん
 「夢の宮」は近くの図書館に揃っていると思います——「マリみて」も最初はここで借りました——。最近はほとんど貸し出し中のようですが、前から興味はあったので、折りをみて読んでみるつもりです。
>管理人さま
 あるいは、短編はシリーズの方とは別の時期の話にするつもりで——あるいはなっても良いように——作ったか。