コラムあるいは雑文

だから、聞いたってば    - 05/07/17 -

「薔薇のミルフィーユ」についての三回目。今回は「黄薔薇パニック」です。

このエピソードは由乃さんの視点で書かれています。
このサイトの「視点キャラクターと人称」を見ていただければ解ると思いますが、意外と「由乃さん視点」は少ないのです。
視点交代の多いエピソードでは、ちょくちょく出番が回ってきますが、エピソードのメインの視点になったのは、他には「黄薔薇注意報」ぐらいしかありません。
考えられる理由のひとつに、由乃さんの場合、祐巳とのからみが多いことがあげられます(祥子さまほどではありませんが、その祥子さまも視点役は一回だけです)。
作者は「祐巳が登場している場面ではなるべく祐巳視点にする」ようにしていると思われます。シリーズ全体の主人公といえる祐巳が登場しているのに、第三者になってしまうのは不自然ですから当然でしょう。祐巳が第三者になるのは、効果を狙った特別な場合です。そのとばっちりというか、由乃さんは登場する割には視点役が回ってこないのです。
ですが、「黄薔薇革命」でも由乃さん視点はありません。「黄薔薇革命」には、祐巳が登場しない場面がたくさんあり、三奈子さままで視点役が回ってくるのに、由乃さんはすべて令さまに視点役をとられて(笑)しまいます。

で、今回の「黄薔薇パニック」は、すべて由乃さん視点です!
冒頭から全開です。いけいけゴーゴーです(笑)。
まあ、からみ役はほとんど菜々ちゃんしかいませんから、さすがに「菜々ちゃん視点」というわけにはいかなかったでしょう(それはそれで読んでみたいですが)。
コラムタイトルの「だから、聞いたってば」は、冒頭に出てくる一文ですが、いわゆる「台詞」ではありません。
「マリア様がみてる」の視点は、ほとんどの場合「作者視点」でもあり、天上から操っているはずの作者が、あるキャラに「降りてくる」(別の言い方をすれば憑依する)という感じのものです。ですから、その「降り具合(シンクロ率?)」もキャラによって微妙に違います。
作者が「降りにくい」と感じるキャラは、いわゆる書きにくいキャラに相当し、視点役もなかなかまわってこないでしょう(もしかしたら、祥子さまもそうなのかもしれません)。
ところが、今回の「黄薔薇パニック」は、もう完全に「由乃さん視点」です。完全に降りてます(笑)。勝手な想像ですが、筆も相当に走ったことでしょう。台詞以外の文章はほとんど「由乃さんの心の声」です。なんだか、いつもと文体が違うような気もします。祐巳視点の場合、もともと作者と祐巳の立場が非常に近いのか、文章のスタイルまで変わることはないのでしょうが、由乃さんの場合、もう、反対に「作者が憑依されている」という感じです。
もしかしたら、由乃さん視点は「書きやすすぎて、こうなってしまう」ことから、なかなか由乃さん視点を(本格的には)使えなかったのかもしれません(ちょこちょこ使う分には暴走は押さえられる?)。

何はともあれ、全開の由乃さんを堪能できて、読者として大満足なお話でした。
ただ、ストーリーとしては、真相が途中で予想できてしまったのが残念でしたが。

ついでというか、菜々ちゃんについてちょっとだけ。
いままで様々なタイプのキャラが登場していますが、新しいキャラである菜々ちゃんがどんな子なのか、多くの読者(もちろん私も)が興味津々だったことでしょう。私は「これだけ個性豊かなキャラ達の誰とも違う新しいキャラ」は、ちょっと想像できなくて、どんな性格になるのか、まったく予想できなかったのですが・・・
すばらしい! ふたを開けてみれば「由乃さんの妹として、もう他には考えられないピッタリはまるキャラ」です。読む前は「由乃さんの妹」というのがうまくイメージできませんでしたが、読後はそれが思い出せないぐらいピッタリです。
菜々ちゃんは「江利子さまに似ている」という感想を聞きます。確かに似ているところもあるかと思います。ですが、江利子さまは「得手不得手がない」という人でしたが、菜々ちゃんはそうではなさそうです。江利子さまは「いつも、つまらなそう」でしたが、菜々ちゃんは「ちょっとしたことにも楽しみを見つけるタイプ」と思われます(事件が起こらず、由乃さんとケーキセットとおしゃべりのデートになっていたとしても)。

というわけで、「薔薇のミルフィーユ」だけで三回分のコラムにしてしまいしたが、本当は「タイムテーブル」の方を作らないと・・・(汗)。
2005/07/18 04:39:31〔投稿者:円〕
由乃さん視点って少なかったんですね。考えてみると祐巳視点からでも由乃さんの考えは比較的分かりやすいように思います。これに対して祥子さまの考えは祐巳には分からないことがよくあるので、祥子さま視点がないことは別に意外とは感じられないのでしょうか。
祐巳と作者の立場が近いというのはその通りですが、そうであるが故に文体は変化しやすいと思います。ここ何巻かだと「特別でないただの一日」はそれ以前と比べて、かなり地の文の雰囲気が変わったように感じました。
2005/07/20 00:51:35〔投稿者:管理人〕
>祐巳と作者の立場が近いというのはその通りですが、そうであるが故に文体は変化しやすいと思います
なるほど。特に文体の変化に注目して読んでいるわけではないので正確にはわからないのですが、祐巳の状態(元気なときと落ち込んでいるとき)によっても変化しているかもしれません。最近の祐巳は課題を抱えたままなので、文体も深刻になる傾向があるかも・・・(思いつきで書いているので、確かめていません。汗)
「紅薔薇のため息」は少なくとも最初のうちは「楽しい遊園地デート」のはずなのに、読んでいてちっともうきうきしてきません。重苦しい感じがするのは文体のせいなのかも。
でも、「黄薔薇パニック」の由乃さん視点は「台詞の文体に地の文が浸食されている」という感じ(笑)がします。このエピソードだけは由乃さんの一人称(私)でもよかったんではないかと思っています。由乃さんの一人称の視点はまだ登場していませんし(見落としがなければ)。
2005/07/20 22:04:38〔投稿者:魔月〕
菜々ちゃんとデコちん失礼、先代貴黄薔薇様との類似は妹オークションの時点では、容姿と4人兄弟の末っ子ぐらいでしたが、ミルフィーユでは面白い事好きが加わりました。
ただ江利子様は令さまを妹にしたときだけは積極的でしたが、それ以降積極的に動いているのは、由乃に対してだけで、熊へのプロポーズも、父兄4人が迷惑を掛けた後で、それがなければ(熊にとってはデートと呼べない程の)デートを繰り返しただけではないかと思われます。無題の祐巳への対応も、薔薇の館へ呼び出された志摩子への対応も(おそらく聖-栞問題も)、面白い方向へ混ぜっ返すでなく、解決に協力するでなく消極的です。
  それに対し菜々ちゃんは、最初のデートを渋っていたのは面白くならない可能性を考えたかもしれないが、面白そうな展開があると積極的に関わっている。また、剣道に対しての興味は高く(由乃の推測通りに姉妹でNo.1の才能かはともかく)、どれもつまらない江利子様とは異なる。
  最早妹候補ではなくなった可南子ちゃん、妹候補筆頭の瞳子ちゃん、祐巳、乃梨子等は姉を困らせても、客観的に見れば従うが、作者が述べている通り、菜々ちゃんは自分の考えで姉を振り回す由乃に最も近い。ただ、キャラが被らないのは、由乃は自覚している通り回りが見えなくなる事が往々にしてあるが、菜々は状況把握が(今のところ)しっかりしているからであろう。
  これは、実現しない程先(小説の中で1年以上)のことであろうが、つぼみの菜々は「剣道部が4年連続黄薔薇独占するのは問題だ」と言い、立候補せずに可南子に立候補させ、その妹になり二年連続つぼみになる事を推し進め、由乃と喧嘩になる。また、その結果現椿組三人娘の薔薇様揃い踏みが誕生する。そんな話が読みたいのですが…
2005/07/21 09:01:49〔投稿者:韓子温〕
確かに黄薔薇パニックはテンポが良くてノリで読めました。由乃さん視点だったからなんですね。
ところで、黄薔薇の話って「黄薔薇〜」が多すぎませんか。
>魔月さま
妹オークションではなくオーディションです。
2005/07/21 12:13:17〔投稿者:魔月〕
>妹オークションではなくオーディションです。
ご注意ありがとうございます。
指摘されて、自分で笑ってしまいました。
オークションしたら、由乃ちゃんは積極的に買いそうですが、江利子さまが邪魔するために値を吊り上げそうです。
祥子は祐巳が出ない限り参加しないでしょうしね。
2005/07/24 00:48:50〔投稿者:管理人〕
>妹オークション
「妹オーディション」のタイトルが発表された頃、「妹オークション」と読み間違えたひとたちが、けっこういたみたいですよ(笑)。
「妹オークション」で検索すると、「うっかり読み間違えた」という内容のページだけでなく、「素で間違えてる」ページも・・・
2011/08/01 19:49:37〔投稿者:Julz〕
You know what, I'm very much inclneid to agree.