コラムあるいは雑文

有罪?無罪?    - 05/11/14 -

更新しないにもほどがある!
と、いわれそうなほど久しぶりなコラムです。

結果的に長期間熟成させることになってしまった今回のネタは「マリみての登場人物の犯罪」についてです。
当初は「現実の日本の法律に照らし合わせて検証してみようか」などと大それたことを考えてはみたのですが、法律というのは素人がちょっと調べたぐらいで正しく判断できるものでは到底なく、私にはとても手に負えないものだということがわかっただけでした。
というわけで、それぞれの行為について素人感覚で考察するにとどめることにしました。
対象とするのは、マリみての中で「違法行為にあたりそうな行為」あるいは「ひとつ間違えれば違法行為になるかもしれない行為」です。

武嶋蔦子
「シリーズ全体」:校内での隠し撮りまがい、盗撮まがい
蔦子さんの校内での写真撮影は、事実上公認というか一般生徒からも認められてますから犯罪とはいえないでしょうね。
時々やり過ぎてしまうこともあるかもしれませんが、いちおうスジは通していますし、無理強いはしないでしょう。
「黄薔薇まっしぐら」:校外での江利子さまに対するストーカー行為、パパラッチまがい
こちらのほうは校外のことですし、江利子さま(もしくは江利子さまのご家族)が、文句を言ってきたらかなりあぶなかったかもしれません。
佐藤聖
「シリーズ初期」:祐巳にセクハラまがい
祐巳は抵抗することもありますが、本気でいやがってるわけではないようですので、セクハラではないでしょう。
それに、本気でいやがれば聖さまもしないと思います(たぶん・・・きっと)。
「いと忙し日日」:だまして祐巳たちに隠し芸をさせる
これは悪意の無い嘘ではありますが、結果として祐巳は無理をして授業中倒れてしまったわけですから、大事になっていたら聖さまの責任は重いと思います。つまり、嘘が悪いというよりも、まじめな祐巳のその後の行動にもっと注意を払うべきだったでしょう。
柏木優
「無印」:女子校内で痴漢行為? 強制わいせつ未遂(キス未遂)
痴漢のほうは、誤解ですし腕をつかんだ程度ですし、まあ、無罪でしょう(笑)。
キス未遂のほうは、祥子さまの意思を確認せずにいきなりですから、もし未遂でなかったら確実に有罪です! 私はそう決めました!
まあ、でも未遂ですから無罪かな・・・。
「長き夜の」:祐麒を賭けの対象にして拉致
卒業生としての強い立場を利用して、下級生を思い通りに連れ回すなんて、絶対、犯罪・・・だと思うのですが、祐麒は逃げようと思えば逃げるチャンスはいくらでもあったでしょうね。ある意味「従うことで先輩の顔を立てている」という感じもしますし。でも、やっぱりこういうのは個人的に嫌いです。ちゃんと訳を話して納得してもらって来てもらえばいいのですから。
「涼風さつさつ」:推理小説同好会メンバー達を平手打ち(校内暴力? 体罰?)
これも「部活のOBとしてのけじめ」のようなものかもしれませんが、ばれれば問題になるでしょう。
推理小説同好会のメンバーの重大な行為(後述)を不問に付す代わりに、何らかの罰は必要だったとは思います。ですが、できれば暴力以外の方法を選んでほしかった。
「特別でないただの一日」:見知らぬ中年男性(可南子ちゃんのお父さん)に学園祭チケットを譲渡
柏木氏は自分に自信があるので「赤ん坊を連れたこの人物が悪人とは思えない」という判断に疑いを持たなかったのでしょう。
結果的には正しかったわけですが、もし、裏目に出ていたら柏木氏の責任は重いと思います。
小笠原祥子
「無印」:柏木氏に平手打ち
これは正当防衛です。絶対です(笑)。むりやりキスしようとした柏木氏が100%悪いんです。
祥子さま贔屓の私は、公平な判断はできていないかもしれません(笑)。
福沢祐巳
「無印」:柏木氏を突き飛ばし
祥子さまを追いかけようとしている柏木氏を後ろから押して転ばせた行為のことです(笑)。
汚してしまった服も本人のものではありませんから、クリーニング代という問題は発生しません。
でも、もし柏木氏が怪我をおったりしていたら・・・
春日せい子、上村佐織
「いばらの森」:駆け落ち、心中未遂
この場合、ふたりとも死なずに済んだわけですが、一般論として、心中しようとしてひとりだけ死んでしまっていたら、生き残ったほうはどんな罪を問われるのでしょうね。よくわかりません。
築山三奈子
「黄薔薇まっしぐら」:学校新聞に「あきらかに本人を推測できる表現で事実と憶測を含む小説?」の掲載、名誉毀損?
これはあきらかにやり過ぎでしたね。いくら小説だと言い張っても、この場合は通らないでしょう。「事実とフィクションを半々」というやり方もかなりあくどい方法といえます。
学校新聞とはいえ、校外にもある程度出回っているようですし、相手の出方によってはかなりまずいことになっていたかもしれません。
鵜沢美冬
「紅いカード」:宝探しゲーム前に発見した宝(カード)を持ち出してしまう
宝探しゲームの宝を事前に見つけてしまったのは確かに不運でした。ですが、それがゲームの宝と認識して持ち出してしまったのはやはりまずかったでしょう。幸運にもゲームの宝が3つあり、ゲームそのものを台無しにしてしまう事態は避けられたわけですが、あの時点ではまだ時間があり正直に届けてあらためて別の場所に隠してもらえばゲームに参加できる可能性はありました。
まあ、それができるのなら悩まなくてすんだんですけどね。実際に隠し場所にあらわれたのが祐巳だけだったから良かったのですが(結果的に祐巳は宝を見つけたのと同じ利益があった)、もし他にもあの隠し場所を推理できる参加者があらわれていたら、美冬さんはもっと罪の意識に悩まされる結果になったかもしれません。
内藤笙子
「ショコラとポートレート」:変装してゲームに参加
中等部の生徒が高等部の制服を着て校内にいる事自体、かなりまずい「ばれたら大変なこと」だったと思います。同じ学園の生徒ということで、いる事自体は特に問題にはならないようですが、変装してなりすますのはかえって「悪質である」と判定されそうです。
他人(といっても実の姉ですが)の名をかたってゲームに参加したわけですが、実質的にゲームには参加していませんね。罪の意識からかえってゲームに集中できなくなってしまったわけです。
もし、本当にカードを発見してしまっていたら・・・
二条乃梨子
「銀杏の中の桜」:受験料を使い込んで京都旅行
親から「受験料」としてもらったお金を個人的な趣味を目的とした旅行の費用にしてしまったのですから、やはり犯罪といえるでしょう。ただし、こういった親子間の場合は実際に罪に問われることはないと思いますが。
それにしても乃梨子ちゃん、思い切ったことをしましたよね。滅多にないチャンスで、しかも正直に親と交渉してもおそらく認められない(受験の前日に京都日帰り旅行ですから)ことが分っていたので、乃梨子ちゃんとしても背に腹は代えられないといったところだったのでしょう。
松平瞳子
「BGN」:乃梨子ちゃんの鞄を勝手にあけて数珠を確認する
さて、多くの読者が思わず眉をひそめたであろう行為ですが、鞄の中からなにかを盗んだわけではありません。見ただけです。ですが、ご丁寧に巾着袋の中まで確認したわけです(それが目的でしたし)。法律的にはどんな罪になるんでしょうね。
確かに学校というのはプライベート空間ではありませんから鍵をかけていなかった乃梨子ちゃんは無防備すぎたでしょう。でも、他人に鞄の中を覗かれるなんて、想像しただけでもかなり嫌な気分です。
「BGN」:乃梨子ちゃんの靴を隠す、上履きにクリップを入れる、机に落書きをする
まあ、これはその後の計画の一部といって良いでしょう。たぶん、瞳子ちゃんが自分の判断でやっていたのですが、度が過ぎないように気を使っていますし(気を使いすぎて、乃梨子ちゃんにはあまり効果無かったかもしれませんが)。
「BGN」:薔薇さま方と共謀して乃梨子ちゃんの鞄から数珠を持ち出す
これは数珠を持ち出していますから、窃盗といえるかもしれません。ただし計画の責任者は祥子さまと令さまです。瞳子ちゃんは指示されて動いただけです。それでも、共犯ではあります。
私の想像ですが、この計画を実行するにあたって、祥子さまたちは志摩子さんのご両親には事前に根回しをしていたのではないかと思うのです。志摩子さんに自ら告白させるための小道具として数珠を使うことを含めて。
とあえず、「乃梨子ちゃんが根に持つタイプでなくてよかったね」ということでどうでしょう(笑)。
青田先生の娘
「パラソルをさして」:放置された青い傘をかってに持ち帰る
その傘が放置されたものにしか見えなかったとしても、かってに持っていってしまうのはやはり犯罪といえるでしょう。特に駅構内などの場合、24時間以内に駅員等に届けないといけない決まりだそうです。路上などで拾った場合は7日以内だそうで、持ち主に心当たりがある場合は直接返しにいくのはいいみたいですね。となると駅で持ち主に心当たりがあるものを拾った場合はどうすればいいのでしょう。青田先生の娘さんの場合も広い意味でそういうことだと思います。結果的には持ち主のところへ無事届いたとはいえ、「実は在校生の物ではなく、現在福島に住んでいる卒業生の持ち物だった」という可能性もあったわけですから、やはり賭けであったことは違いありません。
山口真美
「おじいさんと一緒」:校外での志摩子さんに対するパパラッチ行為
三奈子さまにそそのかされて、志摩子さんのプライベートを取材しようとしたわけですが、まあ、失敗に終ってよかったですね(笑)。
これで、中途半端に成功して大間違いの記事にしていたら新聞部も相当なダメージを受けていたかもしれません。
細川可南子
「涼風さつさつ」:祐巳にストーカー行為、アリスや小林君らをストーカー行為
この頃の可南子ちゃんは恐かったですね。あとで写真を見せられたときの祐巳もそうとう気分悪そうでしたが、私だったらしばらくは安心して外を歩けないかも。常に「誰かに見張られているじゃないか」という恐怖感に悩まされそうです。
推理小説同好会メンバー
「涼風さつさつ」:祐麒と間違え祐巳を拉致
悪ふざけするにも慎重さが必要ということですね。計画と違った状況での行き当たりばったりの行為が重大な結果を招いてしまったわけです。
いや、拉致されたのが実際に(祐巳ではなく)祐麒だったとしても、計画通りアリスだったとしても、ちょっといたずらの度を越していると私は思いますけどね。結果的に表沙汰にならずに済んだのは祐巳の配慮にすぎません。もし、祐巳が怪我でもしていたら取り繕いようがなかったでしょう。
細川夕子
「特別でないただの一日」:リリアン校内侵入未遂
学園祭のチケットがないからといって塀をよじ上って校内に侵入というのは成功していたらやはり犯罪でしょう。侵入しようとしているところを巡回中の警察官にでも見つかれば、直ちに現行犯逮捕されそうです。
まあ、実際のところは(塀をよじのぼるのは)到底成功しそうにない無謀な試みだったようですから、そういう事態にはなり得なかったわけですが。
細川可南子の父
「特別でないただの一日」:青少年保護育成条例違反?
可南子ちゃんのお父さんは、まだ高校生である夕子さんを妊娠させてしまったわけです。
国の法律ではなく条例なので、都道府県によって温度差があるようで一概にはいえませんが、淫行条例(通称)違反の疑いがあります。
この場合「妊娠」が問題なのではなく、その前の性行為が問題になるんだと思いますが、それについても「それ自体が目的」の場合と「真摯な交際関係」があった上での場合では違うみたいです。
よくわかりません。
このふたりの場合、現在は結婚して一緒に暮らしているわけですし、まあ、お咎め無しということになるんでしょうね。
でも、やっぱりね、たとえお互いに好きになって自然の成り行きだったとしても、仮に夕子さんのほうが積極的に誘惑した(仮にです)のだとしても・・・
可南子父! 大人なんだから、自制しなくちゃ。
祝部みき
「図書館の本」:学校図書館の蔵書(枕草子)を私物化
図書館の本に清子さまのサインをしてもらってしまい、返せなくなってしまった。弁償はしましたがやはり罪にはなるでしょうね。
私の通っていた高校では、蔵書を無くしたとか汚したとかした場合、弁償とかではなく別のペナルティーがあったような気がします。反省文を書かされるとか、一定期間貸し出しが制限されるとか・・・だったかなぁ(大昔のことですので記憶が・・・笑)。

以上ですが、たぶん見落としがあると思います(笑)。なにかありましたら、遠慮なく指摘してください。
2005/11/14 16:36:00〔投稿者:くりくりまろん〕
違法性に焦点を当てるなんて、面白い切り口で感心させられます。法律との検証は差し控えられるとのことですがちょっとそれっぽい書き込みをお許しください(汗)。
・一番分かりやすいのは、「さつさつ」での柏木氏の平手打ち(暴行罪)でしょうか。人の身体に向けた有形力の行使ということで刑法の中での種々の「暴行」のうちで最も広義のものですね。ドラマの中などでも時々見られますが、ドラマとおなじく平手打ちをした側の柏木氏に道義上の正当性ががあると思う人が多いのではないかと思われるシーンです。
祥子さまの平手打ちは、危険が差し迫っているという「急迫性の要件」、過剰な行いではないという「相当性の要件」も備えていて正当防衛が成立しそうです。祐巳の突き飛ばしも正当防衛に入りそうな気がしますが要件を満たすかどうか微妙です。
・「図書館の本」は器物損壊罪・横領剤が成立する可能性が。
・乃梨子ちゃんの受験料使い込みは横領罪ですが、何しろ親からのものなので刑法云々は好ましくなく、処罰を免ずるという「親族相盗」の規定に当てはまりますね。
・心中については自殺関与罪に括られる自殺幇助罪や教唆罪になるでしょうか。一人生き残った場合でも成立するというのが多数説です。未遂の規定があるので未遂の場合でも未遂罪が成立します。
・瞳子ちゃんが数珠を盗んだ件で論点になりそうなのが共犯に関連しての「薔薇様方の正犯性」です(笑)。薔薇様方は犯意の形成に関与したが実際に手は下していないので教唆になりそうですがそれでは弱すぎるのではないだろうかと。(教唆は「従たる」ものとして幇助と共に狭義の共犯に含まれ、従犯とも言われます。共同正犯は、一部しか行為を実行していなくても「共同して実行した」と言えることに注目し、互いに全ての責任を負うとした共犯で、従犯の対概念です。)この点、日本では判例主導で発達した共謀共同正犯という考え方があてはまりそうです。相互の強い連絡性、背後の大物としての影響力を考えうると、瞳子ちゃんのみを窃盗の正犯とせず、薔薇様方も共に実行行為をなした共同正犯とする余地がありますね。
マニアックだけれどもいろいろと穴がありそうな書き込みを失礼しました。きっと蓉子さまならもっと良く知っていると思います(大汗)。
2005/11/14 22:23:34〔投稿者:アルス〕
 久しぶりにカキコさせてもらいますが、祐巳ちゃんの聖さまに対する「キス」は「浮気」になるか否かも付け足して欲しいです。
 (もちろん、犯罪って程重くは無いのですが・・・)
 ちなみに瞳子ちゃんの鞄問題は以前に放映された「行列のできる法律相談所」では「罪にならない」らしいですが、やはり人の鞄を勝手に開けられた事のある人にとっては気持ちの良い物ではないでしょうけど。
2005/11/14 22:49:12〔投稿者:アルス〕
 追伸:祐巳ちゃんの妹問題の自覚の無さは現実を入れてもらいますが、これまた「少子化問題」なのでは!?
 (別に犯罪でもありませんが、旧三薔薇時代にはすんなりと決まっていた「姉妹」が未だに決め掛かっているのはやはり不思議に感じます。 さすがに12月辺りの新刊では決まっているであろうとは思いますが・・・)
2005/11/15 00:41:46〔投稿者:円〕
ずっとあたためていたネタとはコレでしたか!面白くもあり、かつセンシティヴな話題ですね。
実は大学では法を専門としていますが、それゆえに滅多なことは書けません(笑)でも、気になったことをいくつか。
まず、祐巳が柏木さんを突き飛ばした件について。怪我を負わせていたとすると傷害罪ですが、そうでなくても暴行罪にはなります。ただし暴行罪には過失犯処罰規定がないので、暴行罪の成立には故意が必要です。ここでテキストを見てみますと、「申し訳ないけど肩を押して転がしてしまった」とあります。ちょっと微妙ですが、故意でやったような感じもします。
次に柏木さんのキス未遂について。強制わいせつ罪は未遂犯も処罰されますが、あの行為は強制わいせつ罪には当たらないかもしれません。条文中に「暴行又は脅迫を用いて」とありますので。
又、ここで祥子さまの正当防衛が成立するかどうかも疑問です。一応柏木さんは事前に「これからキスをする」と意思表示していますし、婚約者と言う関係も考慮に入れると、正当防衛の条文中にある「急迫不正の侵害」に該当しないかもしれません。祥子さまは拒絶の意思を言葉で示すこともできたのではないかと。もっとも、あのシーンでは、柏木さんは叩かれて当然(倫理的には問題なし)とは思いますが(笑)
最後に、リリアンかわら版について。あれは結構危ない橋を渡っていると思います。名誉毀損罪の条文には、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず」とありますので、嘘は勿論、本当のことを書いたとしても、内容によっては名誉毀損罪になります。又、刑法上の名誉毀損罪にまではならないとしても、民法上の名誉毀損にはなり得ますので、損害賠償か原状回復、あるいはその両方をしなければならなくなるかもしれません。
なるべく専門用語は使わないようにしたつもりですが、分かりにくかったらすみません。
2005/11/15 21:08:44〔投稿者:管理人〕
>くりくりまろんさま、円さま
そうです、そういう感じの検証を目指していたんです。
ですが、私にできることといったら検索して調べることぐらいで、けっきょく挫折したわけです(笑)。
>アルスさま
>祐巳ちゃんの聖さまに対する「キス」は「浮気」
少なくとも祐巳自身は頭の中で(由乃さんが)「浮気」と言ってますから、自覚はあるといえるでしょう。
しかし「お餞別」とも言ってますから、聖さまへの「最後のサービス」でしかなく、気持ちが動いたわけではないと思います。
2005/11/15 22:46:41〔投稿者:円〕
二度目のコメントですが、訂正と追加をさせて頂きます。
>怪我を負わせていたとすると傷害罪ですが、そうでなくても暴行罪にはなります
これは誤解を招く表現でした。祐巳に突き飛ばされたぐらいでは、怪我をしていたとしてもおそらく擦り傷ぐらいでしょうから、その程度では「傷害」にはならず、暴行罪が成立するに止まります。具体的には、全治4〜5日までぐらいなら「傷害」にはならないようです。
それから乃梨子の受験料使い込みについて。横領罪が成立しそうですが、もし使い込んだ金額分のお金を乃梨子が持っていた場合、横領罪は成立しません。なぜならば金銭には特定性がない(自分の千円札も親から預かった千円札も同じ)からです。
さらに瞳子の窃盗容疑について。判例によると、窃盗罪の成立には領得の意思(権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用・処分する意思)が必要とされています。
瞳子には数珠を返還する意思がありましたので、その他の事情もあわせて考えますと、領得の意思はなく、よって窃盗罪には当たらないと言えるかもしれません。ただ窃取してから返還するまで、ちょっと時間がかかり過ぎているので、その辺りが難しいところです。
あと、コラムにないものとして、「薔薇のミルフィーユ」で乃梨子が聖さまのジャケットの襟をつかんだのは、暴行罪になります。
あっ、せっかく乃梨子が横領罪にならない可能性を考えたのに、自分で別の犯罪を立証してしまいました(笑)
2005/11/15 23:27:11〔投稿者:管理人〕
>円さま
詳しい解説ありがとうございます。
>金銭には特定性がない
京都旅行代が自分の貯金で間に合うなら、乃梨子ちゃんなら惜しまないと思うんですけどね。
ただ、そうだったとしても「受験料として使うという約束を守らなかった、いまさら間に合わない、返せば済むというものでもない」というのは、別の罪状になりそうな気もします。
>「薔薇のミルフィーユ」で乃梨子が・・・
ああ、忘れてました。なにか忘れてると思ったんですけどね。
ということは「割烹着に掴みかかった」のほうは正当性が認められるということですね(笑)。
2005/11/16 01:06:05〔投稿者:いわし〕
こーゆー切り口はあまり見たことありませんね新鮮です。(他の所でやると荒れる原因にもなりそう)
こうして見ると、マリみてはフィクションとしてはおとなしい方なんだろうなぁと改めて思います。
これは憶測ですが聖さまや柏木さんが道路交通法あたりに引っ掛かってそうな予感(笑)
2005/11/16 05:02:27〔投稿者:紫煙〕
こんにちは。コラム楽しく読ませていただきました。
蔦子さんと新聞部は前々からアウトっぽいなと思った事は有りましたが
こうして並べて見みると皆様かなり危ない橋を渡っているみたいですね(笑)
コラムにないもので自分が気付いたのは無印での祥子様の
ハイヒール攻撃(暴行罪?)とチェリーブロッサムでの乃梨子の机への落書き(器物損壊罪?)でした。
こういう視点で見ると無印とチェリーブロッサムはかなり危ないお話になってしまいますね(笑)
2005/11/16 16:24:53〔投稿者:円〕
>「割烹着に掴みかかった」のほうは正当性が認められる
すみません、そっちの方はすっかり忘れていました(笑)
ただ、結論から言えば、乃梨子は無罪です。
あの場面は事情を知らなかった乃梨子視点ですので、実際には志摩子さんは本心から抵抗していたのではないと思います。そうだとすると「急迫不正の侵害」はないことになり、正当防衛は認められません。この場合はいわゆる誤想防衛の問題になりますが、誤想防衛において故意犯は成立しません。なぜなら乃梨子は「急迫不正の侵害」の存在を誤信していたため、全体としては「違法性を基礎付ける事実の認識・予見」がないからです。
なお、誤信したことに過失があれば過失犯が成立しますが、暴行罪には過失犯処罰規定がない(故意犯しか処罰されない)ので、無罪です。
逆に、もし志摩子さんが本心から抵抗していたとすると、賢文さんに暴行罪が成立する可能性があります。まあ、多分そんなことはないでしょうが。
2005/11/16 21:35:17〔投稿者:管理人〕
>いわしさま
どもども(笑)、このアイデアを思いついたのは一年近く前になります。難産でした(笑)。けっきょく、大幅にあきらめた内容なのですが。
>聖さまや柏木さんが道路交通法
それも入れようかと思ったのですが、無謀運転と言えるほどかどうか、単に運転がへたということかなと(笑)。
>紫煙さま
>祥子様のハイヒール攻撃
それは見落としてました。これは有罪っぽいですね(笑)。
>チェリーブロッサムでの乃梨子の机への落書き
それはBGNとして入れてありますが、そういえばチェリブロでしたか。
>円さま
詳しい解説ありがとうございます。
まだまだ他にも見落としがありそうな気がします(笑)。
2005/11/17 01:40:55〔投稿者:アルス〕
 後、瞳子ちゃん絡みですが、初対面の祐巳ちゃんに対する「だって、祥子お姉さま。おっかしいのだもの、その方」という発言は果たして「侮辱罪」になるかどうかも検討してもらいたいです。
 このセリフの為、彼女の評価が分かれてしまったわけですから・・・(第一印象を上書きする人と引きずる人とに)
2005/11/17 22:56:59〔投稿者:黒両〕
おもしろそうなお話なので、参加させていただきます。穴だらけですが、いくつか追加と修正案?を。的はずれなところがありましたらご容赦願います。
・佐藤聖
だまして祐巳たちに隠し芸をさせた件は、虚偽により役務を提供させたということで、詐欺罪になりそうに思えます。乃梨子の耳の穴に指を入れた件は、相手が同意又は依頼していたわけではないので、暴行罪にあたりそうですが、これは、乃梨子が衿をつかんだ件とおあいこというのが現実的な決着のように思えます。
・小笠原祥子
マリア祭の一件に絡んで、数珠持ち出しの件で窃盗罪が成立するならば、円さまの言われるとおり、令とともに共謀共同正犯となりそうです。できるだけ単純に例えれば、ヤのつく自由業での鉄砲玉=瞳子、指示した親分又は兄貴分=祥子と令、事務所の電話番=祐巳と由乃というところでしょうか。ただ、不法領得の意思が認定されるとは思えませんので、倫理的な問題は別として窃盗罪不成立の可能性が高そうです。志摩子と乃梨子にお聖堂を掃除させた件は、本来その義務がない者に義務があるかのように誤信させて役務を提供させていますので、詐欺罪の可能性がありそうです。
・支倉令
マリア祭の朝、乃梨子の顎をつかんでいろんな方向に顔を向けさせるということをしていますが、これは暴行罪が成立しそうに思えます。また、マリア祭で乃梨子に「数珠がどうなってもかまわないでしょ」などと言って、数珠の所有者の名前を言わせようとしたのは強要罪が成立しそうです。さらに、「黄薔薇注意報」でのビニール傘の無断使用は、明日返しておけばいいといっても遺失物横領又は占有離脱物横領になるかもしれません。
・二条乃梨子
受験料使い込みは親族相盗例ですから論じるだけ無駄かと思います。
>アルスさま
侮辱罪は、事実を摘示しないで、公然と人を侮辱することで成立するとされていますので、「おっかしいのだもの。その方」というのは、要件を満たしていそうです。ただ、あの場面で、祐巳は遅刻した自分に非があることを認識しており、さらに祥子の質問に嘘を言ってしまったため非常にやましい気持ちでいたのだと思います。そんな気持ちでのやりとりが、瞳子の笑いを誘い、その笑い声に悪意があるように感じさせたのも祐巳のやましさだったのではないでしょうか。個人的には、この場面で作者の狙いどおりに瞳子に悪印象を持った読者のほうが、作品を楽しめているのではないかと思っております。
2005/11/18 20:15:47〔投稿者:管理人〕
ようこそ、黒両さま。
やはり、いろいろと見落としがあったようで、検証ありがとうございます。
思いのほか事例がたくさんあるようですが、そのほとんどが実際には「無罪かせいぜい微罪」だと思われます。法律を持ち出すほどのことではないといえる事例が大部分でしょう。
ですが、あくまでも遊びとしてこういう検証も面白いかと思いました。
2005/11/18 23:21:33〔投稿者:紫煙〕
すみません!落書きは既出ですね(汗)。
あと、追加で気が付いたものを。
祐麒の祐巳への安来節セット貸与と不器用姫のひろみさん。
本編中で「預かり物」とあるので、祐麒は横領罪とまではいかないでしょうが無権代理の問題になりそうな気がします。
ひろみさんのがミケさんからリボンを取ったのはアウトかな?と。ひろみさん不器用過ぎですよ(泣)
2005/11/18 23:23:42〔投稿者:アルス〕
 ここの書き込みされている方が法律に詳しい方々ばかりで素人の私でも、とても興味深く読ませて頂きましたが、最後にもう一つ質問させてもらいます。
 またしても瞳子ちゃん(=かなりのお気に入りキャラですが・・・)の可南子ちゃんに対する「擦り傷」発言(『レディ、Go!』参照)は「名誉毀損」とかになったりとかしますか?
 
2005/11/20 00:53:47〔投稿者:黒両〕
>アルスさま
あの場面では、人気のない非常階段で、瞳子が祐巳だけに「擦り傷と骨折。比べた場合、痛くないのはどちらでしょうね」と話していますので、名誉毀損の要件となる「公然と事実を摘示」を満たしていないようです。私はこの場面は、瞳子は祐巳と二人だけで話しているのを見られたくないだけでなく、その内容が可南子に関することであるので配慮したのだと思って、瞳子の気配りに感心しました。そのあと、暴走しそうになった(可南子の事情についてどの程度知っていたかは分かりませんが、話してしまいそうになった)のは愛嬌というか惜しいというか…。
>管理人さま
DBでこのサイト作成のお知らせがあった頃から見せていただき参考にしておりました。法律の専門職でもない者が乱入して申し訳ない気持ちでおりますが、お許しいただきたいと存じます。
犯罪を構成するのではないかという見方で、登場人物の行動を検証していけば、ここにあげられた件のほかにもまだまだありそうですが、警察が認知したときに無関心ではいないだろうと思われる私的ベスト(ワースト?)スリー、すなわち「バレたら洒落にならんだろう」というのを考えてみました。
・築山三奈子
 罪名としては名誉毀損。小説と言いながら本人と誤信させる氏名を用い、さらに本人を特徴づける写真を掲載するなど、かなり悪質と判断されかねないように思います。民事でも厳しいのではないかと思います。
・花寺学院高等部推理小説同好会メンバー
個々には、逮捕監禁、脅迫、未成年者略取などの罪名が考えられますが、このときにケガでもさせていれば致傷罪が成立しますから、「やったこと」と「けじめ」が少々バランスを失しているようにも思えます。
・春日せい子、上村佐織
本編ではセイが起訴されたかどうかなどの記述がありませんが、罪名としては自殺関与および同意殺人(いわゆる自殺幇助、嘱託殺人)に問われる可能性があります。なお、この事件は「過去のエピソード」で戦争中らしいとされておりますが、私はこの事件は1952〜55年のことであろうという中里一氏の意見に賛成しております。