過去ログ[16]

     
     
    No.1019 【新刊「あなたを探しに」予想】 投稿者 : でるもんた・いいじま : 2007/03/03 16:24
    まんが王倶楽部に情報が出てますね。
    さて、どうなることか…
     
    -1- No.1020 【Re: 新刊「あなたを探しに」予想】 投稿者 : 管理人(ワトソン) : 2007/03/03 22:17
    祐巳と瞳子ちゃんが気になりますが、白いカードの一年生というのも気になりますね。
    でも、クリスクロスで告白(笑)まで漕ぎ着けたので(永かった・・・)、次巻はわりと安心して待てそうです。
     
    -2- No.1021 【Re: 新刊「あなたを探しに」予想】 投稿者 : 佐分利奇士乃 : 2007/03/10 02:45 :
    ごきげんよう。冬紫晴 あらため 十六夜博師 あらため 佐分利奇士乃でございます。
    これでHN落ち着きたいものです。

    白いカードの発見者は一年生、としか書かれていませんから……
    今までに出てきていない、とは書かれていませんから……

    笙子ちゃん?

    ……

    可南子ちゃん!!?
    だったらちょっと楽しみ……

    由乃vsちさとさんが期待大ですが
    志摩子vs可南子ちゃんも予想不能な展開になりそう
     
    -3- No.1024 【Re: 新刊「あなたを探しに」予想】 投稿者 : いわし : 2007/03/14 02:38
    まんが王倶楽部さんに新刊の表紙がアップされましたね。
    もうこれを見て言いたいことはあまりありません。長かった…。

    値段は440円。マリみてはこの位の値段な事も多いですけど
    そこまでボリュームはなさそうですね。
    副賞のデートまでで終了でしょうか

    個人的には表題エピソード以外に1つ2つエピソードが来る事を
    期待しているのですが、どうでしょうねぇ
     
    -4- No.1025 【Re: 新刊「あなたを探しに」予想】 投稿者 : 朱夏 : 2007/03/14 08:35
    表紙、アップされましたね。
    これまでになく晴れやかで、良い感じですね〜。

    440円・・・あとがき含めて220ページ弱くらいかな。最近にしては、ちょっと多め。
    あと、もう少しの我慢なのだ!(>_<)
     
     
    No.995 【「クリスクロス」】 投稿者 : 管理人(ワトソン) : 2006/12/22 01:08
    新刊「クリスクロス」の発売日になりました。
    たぶん、本日中に購入できると思います。
    ネタばれ用のスレッドを立てておきますので感想等の書き込みにはこちらをご利用くださいませ。

    コバルト公式サイトのときめきWebラジオで、
    http://cobalt.shueisha.co.jp/
    由乃さんが・・・じゃなくて池澤春菜さんが「クリスクロス」の内容を少し朗読しています。
    いつものことでしたっけ?
    うっかり、購入前なのに聴いてしまいました。

    志摩子さんのカード関係の推理等は、別スレッド <#1000> を利用してください。
    よろしくお願いします。
    追加:2006/12/23 01:03

    ネタバレ指定を解除しました。
    追加:2007/03/11 13:26
     
    -1- No.996 【Re: 「クリスクロス」】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2006/12/22 09:16
     ネット上ではちょっとしたユーフォリア現象が起きているようですね。この雰囲気の中で小難しいレトリック分析をやらかすのも無粋なので、しばらく控えます(というか、本格的な分析には日数を要しますので)。
     ただ2点。

     物語レベルでは予想が外れてよかった。
     作品のトリックのレベルでは予想がそれなりにあたってよかった(不在者チャンスの前提を崩す、とか、隠す側にとって意外な展開、とか)。
     
    -2- No.997 【「クリスクロス」初感】 投稿者 : 十六夜博師 : 2006/12/22 16:40 :
    ごきげんよう。十六夜博師です。
    「クリスクロス」初感です。

    ・か……か……
     お久しぶりですっていうか。

    ・萌え祥子。

    ・チョコレートの味と包紙の記憶。
     顔や名前は、味や香り(におい)よりも憶えにくいかも。

    ・のりころがし

    ・展開見事。特に黄薔薇カード。
     探している人にとっては盲点でも、探していない人にとっては目立つもの。

    ・瞳子ちゃんと乃梨子ちゃん。

    ・志摩子さん
     ……ますますお父様に似てきましたな……行動が

    ・お預けとクイズ。
     答えはだいたいわかった。たぶんあそこなのだ。ウサギガンティア。

    ・一番気になること。
     ものの数分の間に起こったと考えられること。

    ロアデルは本日も多忙 さま

     ユーフォリア……多幸感ですか?……
     私は……そんな感じではないですね……
     それよりも黄薔薇デートが楽しみで。

    とりあえず。

    数分、ではなく、十数分、でした。

    朱夏さま
     蔦笙でしたね。まさに。からまりそうでからまない。カメラを持って縦横無尽。
    追加:2006/12/23 00:44
     
    -3- No.1006 【Re: 「クリスクロス」】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2006/12/26 15:27
     今回私は本格的に、ネット上で他のファンの方の感想を読ませていただいています。
     皆さんそれぞれに新刊を楽しんでおられるようですが、ちょっと気になったのは、ブログなどに感想を書かれる方の大半が、少女小説を読みなれていない方なのではないかという点です。
     もちろん、『マリア様がみてる』を読むのに、少女小説の知識は必須ではありません。しかし、少女小説の文法を知らないがために、「こんな話は必要ないだろう」とバッサリやってしまう方がいたとしたら、ちょっと残念です。
     そう、『地図散歩』のことです。あまりの不評に驚きました。そこで、少しだけ弁護しておきます。

     少女小説の中に、ライトミステリーとでもいうべき一群の作品があります。
     日向章一郎氏の『放課後シリーズ』『星座シリーズ』、山浦弘靖氏『星子シリーズ』、秋野ひとみ氏『つかまえてシリーズ』、風見潤氏『幽霊事件シリーズ』などが有名どころです。
     これらの作品は、一応ミステリーで、謎解きとかもあるのですが、それが小説の興味のすべてではありません。本格ミステリーのような、緻密な論理による魅力的な謎の解決、を期待して読み始めると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。
     じゃあ、読者の少女たちはこれらの「少女小説のミステリー」に何を求めていたのでしょうか。それは、「仲のよい友達とワイワイキャーキャー言いながら一緒に推理してゆく楽しさ」「ピンチになったら素敵なボーイフレンドが颯爽と助けに来てくれるシーン」なのです。もちろん、ワクワクドキドキの展開とか、格好いい少女探偵がビシッと犯人を指差す瞬間、なんてのも忘れてはいけません。読者たちは、そんな期待をこめて、ページをめくったものなのです。

     で、『地図散歩』ですが。
     やはりこの「少女小説のミステリー」の系譜に属する作品なんですよね。
     とは言え、ひねくれ者の今野氏のこと、なんと主人公らは「犯人」役として登場します。また、当然のように「ボーイフレンド」は用無しです。
     それでも、「仲のよい友達とワイワイキャーキャー言いながら一緒にカードの隠し場所を決めてゆく楽しさ」はきちんと描かれています。そうです、その「楽しさ」こそが、『地図散歩』の本質なのです。

     この「仲のよい友達とワイワイキャーキャー言いながら一緒にカードの隠し場所を決めてゆく楽しさ」ですが、現役の少女の皆さんには説明なしでもわかってもらえますよね。かつて少女だった方々は、当時の気持ちをちょっとだけ思い出してください。
     少女だったことのない男性読者の皆さん。がんばって想像してみてください。ヒントはあります。『クリスクロス』を読んだ後、白いカードの在り処をめぐってネット上で推理合戦を繰り広げた方も多いでしょう。その時、すごく楽しくありませんでした? その楽しさを百倍してみてください。『地図散歩』にギュッと詰め込まれているのは、要するにそういう気持ちなのです。

     具体例を挙げましょう。172頁11行目から14行目までに、こんなくだりがありますね。

     その瞬間、三人同時にひらめいた。
    「現場!」
     そう、現場だ。
    「枝に吊るすなりして、現場に注意書きを置いておけばいいんだ」

     仲のよい親友同士が、同じ結論に、しかも同時に達した瞬間です。三つの声がハモって、しかもその直後の歓声まで聞こえてきそうです。
     今野氏はこの喜びがちゃんとわかっています。ブラボー。正解。よく出来ました。わざわざ三つ並べて表現しようとしているのは、くらくらするほどの歓喜の瞬間なのです。

     ほかにも、去年の思い出話をする楽しさとか、一人一人考え方に個性があらわれる妙味とか、なかなか決まらないで脱線してゆくところもまた一興だとか、後半で乃梨子が参加して四人パーティーになった途端に次々決まってゆく快感とか。作品の至る所にキラキラした宝物がちりばめられています。『地図散歩』自体が宝探しといってよいでしょう。

     『地図散歩』は、きわめて高純度の少女小説です。ときめきがいっぱいです。白いカードのヒント集としてしか読まないのではもったいない限りです。
     いかがでしょう。テーブルの上に地図ならぬ文庫を広げて、『地図散歩』散歩をなさってみては。
     
    -4- No.1009 【「地図散歩」の魅力】 投稿者 : 十六夜博師 : 2006/12/27 13:31 :
    ロアデルは今日も多忙 さま

    地図散歩の魅力の一つを提示してくださって感謝です。この視点は持っていませんでした。
    私は別の方向から楽しんでました。登場人物の一貫性と変化という点です。ある種、「マリみて」の醍醐味の一つのようにも感じています。コミュニケーションも重要な要素ですが、それはロアデルさまの指摘通りと考えます。

    このところ、特に「ミルフィーユ」以降、紅、黄、白薔薇のイロがよりはっきりとしてきたように感じられます。「地図散歩」はそのまとめに当たるようなお話だったのではないでしょうか。
    まず、昨年の宝探し(「ヴァレンティヌス」)と今回のイベントの大きな差を感じます。
    前回は企画が急であったこと、つぼみたちが乗り気でなかったことなどのために、個人的な希望のもとに隠し場所が選ばれ、そのことによって親しい人やそれについて行った人が圧倒的有利になるということが起きました。
    今回はまるで違う傾向になっています。

    まず、由乃さんは最初反対しましたが、その理由は「自分が探せないのはつまらん」というものでした。このあたりから江利子様の遺伝子が感じられます。
    結局隠す側に回っても結構由乃さんは楽しんでいます。いたずら者……「トリッカー」の役を持っているのではないかと。
    自ら転がっていくことで周りを巻き込む。ギャフンと言わせたい一方で、見抜かれると自分がギャフンと言わざるを得ないのですが、ゲームを盛り上げるには必要な役回りです。

    志摩子さんは「エンターティナー」の役に回りました。お父様に似てきたな〜という感慨を抱いてしまいます。上を見れば佐藤聖がいますし。1年前のことを考えれば想像できない姿ですが、その傾向は早くからあるにはありました。日舞「マリアさまのこころ」に始まり、(ずいぶん間が開きますが)借り物競走、文化祭へと続いていきます。

    祐巳は誤解を恐れずにいえば「ホステス」=招待者の女性形。あるいは「ホスピタリティ」歓待すること、という役を担ったと思うのです。ほんの一瞬、瞳子ちゃんに見つけてほしいという思いが発露しましたが、思い直して薔薇の館に参加者を迎え入れることを選んでいる。さらに言えば、カードを発見するには「祐巳に『立っていただけませんか』などと声をかける、話しかける」という関門さえ突破すればあっという間に見つかるようになっています。それ故に祥子にとって「一般参加者よりも何倍も有利」だったのではないかと。

    隠し場所がそれぞれ特徴的であり、同時に彼女らの意図が見えてきます。「この謎が解けるかどうか……かかってきなさい」「楽しんでくださいね」「気軽に話しかけてくださいね」という。

    現2年生たちがしっかりしてきた分、3年生は実はあわてていたり必死だったりします。1年生は上級生の行動の意味がつかみかねる様子で、乃梨子ちゃんなんか転がされちゃってます。

    それでもやはり、私が気にしているのは瞳子ちゃんのこと。社会科準備室を出てから薔薇の館に現れるまで十数分はあったと思うのです。その間なぜ「走り回っていた」(とかんがえられる)のか。何があったのか。

    長々と失礼しました。
     
    -5- No.1010 【Re: 「クリスクロス」】 投稿者 : 朱夏 : 2006/12/29 00:59
    ごきげんよう。
    上手くまとまらないまま書きます。駄文、長文になると思うので、ごめんなさい。

    「Euphoria syndrome」ですか……。これまでの我慢を思えば、分からないでもない。しかし私としては未解決なことがあまりに多く、気持ちがあまり晴れません。
    今野先生はしばしば、物語中に設定を伏せておいて、そのままになさいます。それは読者に、想像の余地を与える意図であることはわかるのですが……。
    「大きな扉 小さな鍵」でもいくつか、かなり重要な設定が現れました。なのに今巻も、ほとんど放置されてしまいました。ここ一年、そう言う展開が続きます。
    このところ巻数に反比例して物語の進行スピードはより遅く、よりミクロの時間を刻むようになっています。「クリスクロス」は「白地図散歩」の章をのぞけば、たった一日の物語でした。まあその分、物語の密度が(完成度も)上がってるんですけど。

    おおむねバレンタイン企画は、前回から始まっていると見なせば、次回完結の三部作と言うことになりましょうか。「ヴァレンチーヌスの贈り物」から比べ、現在は格段に人間関係が複雑になっています。なので、そうならざるを得ない所でしょう。
    次回は、これまで立てた設定の回収が始まるかと考えられます。
    例えば白いカードは結局、発見されずに終わると予想。何故ならその事によって、今回初めての試みである「予想投票」という設定が生きるからです。
    ただ、誰が志摩子さんとデートすることになるかは、全く予想がつきませんね。志摩・乃梨スールに波紋を起こす新たなキャラ登場も面白い……けど、現時点で新キャラが登場するかは疑問。
    また、さりげなく「赤いカード続編」のフラグが立ちましたが、それもどうなることやら。祥子さま卒業の時点で、結末を見る事になればいいのですが。
    瞳子ちゃんの家庭事情が判明するのは、祥子さまの卒業まで、まだかかるかも知れません。こちらは気長に待ちたいと思います。

    そうそう、祥子さまの「デレ」が見られたのは嬉しい。
    彼女はやはり「つんでれ」な人だと思う。けど、いろいろと自制が効き過ぎて「デレ」を表現するのが下手。その代わり、我慢の限界を超えるとヒステリーになってしまう。
    でもこうして今、素直に「デレ」が出来るようになったのは、やはり彼女が精神的に成長をした証。


    それと田村ちさと、面白いキャラクターです。
    ややもすると、嫌みなほどのポジティブさはすごい。この明快な性格は、どこか令と似ている。どっちも裏表が無くて率直。楽しい事には迷わず飛び込むし、喜怒哀楽を全身で表現する。きっと二人とも「わーっ」と楽しくはしゃいだ後には、けろっと忘れてしまうようなキャラクターなんでしょうね。

    そんなちさとと比べて由乃は違う。由乃の「イケイケGOGO!」は、屈折した性格の裏返し。由乃は元来、物事を複雑に考えがちなタイプだと思う。そしてアクセルとブレーキをいつも、どっちも目一杯に踏んでいるようなところがある。自分で「ホレ青信号だよ」と言い聞かせないと、いつまで経っても前に行けない「心癖」がある。
    だから一旦ブレーキを離すと、アクセルは踏みっぱなしだから、思いっきりロケット・ダッシュしてしまう。
    そんな由乃からすれば、率直で屈託のないちさとは嫌みに見えると思う。
    しかも、ちさとのあっけらかんとした性格故に、ケンカにすらならない。ある意味ちさとは、「ヘタレない令」であり、由乃の天敵かも知れない。

    ロアデルは本日も多忙さま

    何時も興味深いご意見、楽しませてもらっています。
    「地図散歩」を、少女ミステリーの文脈で読み解く手法は新鮮でした。
    「もったいない」というご意見は全く同感です。
    ただ、上記にうっかり私も「フラグ」とかゲーム用語を使ってしまいましたが、現在おおかたのティーンのテキスト読解力は、「文学」よりも「メディアミックス」のルールに従っていると思えます。
    なので、テキストが醸し出す独特の香りや、微妙なニュアンスが理解出来ない。今野先生の文体に時折、「旧い」とか、とんちんかんな意見が出たりするわけです。ラノベ読者のボリューム層が、若いというか幼いことを考えれば、仕方のないことかもしれません。

    それはともかく、「志摩子さんのカード」のスレにも書きましたが、今回は本当にリリアン女学園の地図が欲しかったです。
    かくいう私もたぶんに「メディアミックス」な思考の人間かなと思った次第です。(笑)
     
    -6- No.1011 【蔦笙の行方】 投稿者 : 朱夏 : 2006/12/29 10:53
    長くなるので、スレを変えます。
    十六夜博師さま
    蔦笙でしたね。まさに。からまりそうでからまない。

    今回特に感じたのですが、最近、蔦子さんが霞んでいる。
    祐巳達が次第に、薔薇さまとしての立場に迷いが無くなるに連れて、どうもアドバイサーとしての蔦子さんの出番が、無くなりつつあるように見えます。
    今、物語の主体は、乃梨子・瞳子世代に移りつつあります。
    この世代で現在、安定したアドバイサーの役割を担っているのは乃梨子ちゃんです。
    一年生が物語の中心にいる限り、蔦子さんは出番がない。

    蔦子さんは、「マリみて」の中でも変わった立ち位置のキャラです。
    無印から登場し、祐巳が祥子さまとスールになるきっかけを作った人。しかし彼女自らが、自分の希望や悩みを語ったことはありません。蔦子さんはあくまで、リリアンの傍観者であり、必要なときには颯爽と手をさしのべる賢者で在り続けました。
    これは「マリみて」では特筆すべき事です。
    物語論から見て「マリみて」のキャラクターは、「無印」の時点では、極めて類型的な少女コミック的分類がなされている。なので、今から見ると「無印」には違和感さえ感じます。
    ところが今野先生は巻が進むに連れて、そのキャラクター一人一人を、生身の女子高校生として、血の通ったキャラクターに置き換えて行きます。
    「子羊」以降からは特に、物語の雰囲気が変わっている。何かの「事件」が先にあるのでなく、「仲間同士の情景描写」が主になっているように感じます。「特別でない」など、今野先生は完全にキャラで遊んでいる。

    こうした中で、蔦子さんだけが、「無印」からの位置づけを変えていない。
    彼女はスポコンアニメであれば、ゲームから離脱した解説者もしくはトレーナー。ロボットアニメであれば、戦いに出ずに本部で仲間を待つ「博士(ハカセ)」と呼ばれるようなキャラに近い。
    つまり、物語論で言う所の「援助者」「贈与者」「賢者」に該当する。決して「物語の当事者」ではない。

    今野先生が、彼女だけをその立ち位置にずっと置き続けたのは、祐巳ちゃんや志摩子さん達が道に迷ったとき便利だったからでしょう。
    だから、蔦子さんの個人的事情は、いつも問題にされずに来てしまった。(こうした蔦子さんの特異さに早くから触れていたお一人として、十六夜博師さまがいらっしゃったと記憶しています。)

    今回、蔦子さんは笙子ちゃんからヴァレンタイン・ギフトとして、フィルムをもらいました。……しかし蔦子さんは、その事で、何故悩んだのか?
    メモリーカードでなく、アナログなフィルムだったから……と言う冗談は無しにして。(-_-;) 何事にも察しの良い蔦子さんなら、笙子ちゃんがフィルムに込めた意味を、すぐに察したはずです。何せ、ヴァレンタインデーは、二人が出会って一周年ですから。

    ここでの蔦子さんの迷いは、同時に、今野先生の迷いでもあるかと感じたのは、考えすぎでしょうか?
    つまり、リリアンに在りながら、ずっと透明人間で在り続けた蔦子さんが、始めて生身の人間として描かれることになるかどうか……。
    もしこのまま、笙子ちゃんとの関係を放っておくなら良いでしょう。
    しかしスールにするのなら、蔦子さんの人間性をもっと浮き彫りにしないと、極めてリアルな心の動きを見せる笙子ちゃんとは釣り合いが取れなくなります。
    おそらくサブキャラの宿命として、本編で蔦子さんの個人的事情が語られる可能性は極めて少ない。しかし、いつかどこかで蔦子さんの本音が語られると良いなと思います。

    それにしても、最近、乃梨子ちゃんの役割負担は大きい。
    このままでは、白薔薇スールは動かしにくいのではないだろうか?
    まあ、「マリみて」の大団円が近づいているのなら、このまま変わらないでしょうね。
     
    -7- No.1017 【無茶苦茶遅レス申し訳ないです……】 投稿者 : 十六夜博師 : 2007/02/01 00:47 :
    一ヶ月たってますね
    すみません・・

    朱夏さま

    由乃の「イケイケGOGO!」は、屈折した性格の裏返し。由乃は元来、物事を複雑に考えがちなタイプだと思う。
    そしてアクセルとブレーキをいつも、どっちも目一杯に踏んでいるようなところがある。自分で「ホレ青信号だよ」と言い聞かせないと、いつまで経っても前に行けない「心癖」がある。
    だから一旦ブレーキを離すと、アクセルは踏みっぱなしだから、思いっきりロケット・ダッシュしてしまう。

    膝たたきながら爆笑しました。これほど的確な「由乃さん評」見たことないですよ
    ついでに言えば、加えて運動の経験が不足しているし、行動するにも思い切って出来てこなかったから慣れてなくて、ロケットダッシュするとコケる。まわりを巻き込んでコケる。
    コケたついでに菜々ちゃんを見つけたりするんですが……

    ちさとさんは「黄薔薇注意報」あたりから要チェックキャラでした。令さまより由乃の方が気に入っている感じだったので……
     
    -8- No.1022 【Re: 「クリスクロス」】 投稿者 : でるもんた・いいじま : 2007/03/10 09:32
    朱夏さま <#1011> :
    今回特に感じたのですが、最近、蔦子さんが霞んでいる。
    祐巳達が次第に、薔薇さまとしての立場に迷いが無くなるに連れて、
    どうもアドバイサーとしての蔦子さんの出番が、無くなりつつあるように見えます。

    祐巳と由乃の間でも二人だけで問題を解決してしまうことが多くなりましたね。

    「くもりガラスの向こう側」でAmazonに投稿したレビューから抜粋します。
    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4086007436
    今回の注目点は2つ。由乃の「妹の部屋」発言と、令の余り物再利用料理である。

    まず今回最大の注目点は、由乃の一言「妹の部屋」。今までならこういった分析は蔦子の役回りだったはずだが(たとえば、『レイニーブルー』で志摩子のことを「やっぱり聖さまの妹」と分析したシーン参照)、祐巳に対しては由乃がそういう分析をする立場になった。つまり、由乃が祐巳より一歩先へ進んだ、祐巳を追い抜いたということだ。今まで、精神的には祐巳より一歩後ろを行っていた印象が強い(たとえば、可南子への接し方)が、これで、次期薔薇さまとして頼もしくなってきた。
     
    -9- No.1026 【Re: 「クリスクロス」】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2007/03/17 10:09
     朱夏さんが <#1010> にておっしゃっていること、すなわち、
    今野先生はしばしば、物語中に設定を伏せておいて、そのままになさいます。それは読者に、想像の余地を与える意図であることはわかるのですが……。
     このことに関して、今回の雑誌掲載短編を例に少し考えたことがあります。ただ、ネタバレスレッドがまだないことと、読者の皆さんが事実関係をどの程度把握なさっているのか不明確ですので、様子をみて後日にもまた投稿したいと思います。

     あらかじめ趣旨を端的に申し上げると、「書かれないことで描かれるもの」です。
     
     
    No.1027 【コバルト4月号+短編「四月のデジャブ」】 投稿者 : 管理人(ワトソン) : 2007/03/17 11:40
    遅くなりました。
    コバルト4月号が発売されましたので、ネタばれ用スレッドを立てます。
    「四月のデジャブ」の感想等は、こちらのスレッドにお願いします。

    ネタバレモード解除しました。
    追加:2007/04/28 00:03
     
    -1- No.1028 【Re: コバルト4月号+短編「四月のデジャブ」】 投稿者 : 管理人(ワトソン) : 2007/03/17 20:53
    「四月のデジャブ」、読了しました。

    とりあえず、ひとこと。
    蔦子さんは入学式の日からすでに全開だったんですね(笑)。
     
    -2- No.1029 【Re: コバルト4月号+短編「四月のデジャブ」】 投稿者 : いわし : 2007/03/19 23:01 :
    入学式の日から全開
    蔦子さんがいつからリリアンなのかの描写ってありましたっけ?
    高校受験組では無さそうな雰囲気ですが。

    四月のデジャブ、オチ(?)は途中で読めたものの、
    それが読めてもなお面白いと感じました。やっぱりうまいですね
     
    -3- No.1030 【Re: コバルト4月号+短編「四月のデジャブ」】 投稿者 : 管理人(ワトソン) : 2007/03/20 01:03
    蔦子さんがいつからリリアンなのか
    私も記憶に無いのですが、すくなくとも高校からの外部生ではないでしょうね(たぶん)。

    たまったエピソードは一巻には収まらない量になりましたので、「二巻同時」なんてこともあるかなと思いつつ、共通テーマは何だろう・・・
    「黄色い糸」以外は「一般生徒の話」と言えますし、「枯れ木に芽吹き」を除けば「本編に絡まない一般生徒の話」ともいえます。
    さらに、「不器用姫」「ドッペルかいだん」「枯れ木に芽吹き」「四月のデジャブ」は蔦子さんが共通点ですね。
    個人的には、蔦子さん視点の「のりしろ」で繋いだ短編集を読んでみたいです。

    (ただし、雑誌掲載の短編が必ず文庫になるという保証はありません。のりしろで繋ぐ場合「黄色い糸」が難しそうです)
     
    -4- No.1031 【四月のデジャブ 感想(1/4)】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2007/03/22 14:48
     今回は私が思っていたより反応がよかったようです。『ドッペルかいだん』や『仮面のアクトレス(表題作)』の時のように、そもそも何が書かれているのかさえ理解されずに埋もれてしまうことがなくて、ほっとしています。
     一年前の入学式の日から今年の入学式の日までのタイムテーブルを作ってみました。

    昨年度の入学式の日 いちごと一絵、意気投合
     蔦子が二人のツーショット写真をとる(その写真は後に一絵のパスケースに収められる)
     下校途中、バスターミナル先の交差点で口論になる
     直後、いちごは車道に飛び出してトラックにはねられる
     一絵、救急車で病院まで付き添う
    一絵は毎日病院に見舞いに来て、眠っているいちごに語りかける
     一絵は部活に入り損ねる
    夏休み前 いちごの母が一絵に「もう来ないで」と言う
     以来一絵は病院に姿を見せなくなる
    2月のある暖かい日の朝 10ヵ月ぶりにいちごは目を覚ます、事故当日の記憶を失っている
     約2ヵ月間のリハビリ生活
    今年度の入学式の日 いちごは二葉(一絵の実の妹)に話しかけられる、初めてのデジャブ

     デジャブというモチーフは、少女小説のほとんど定番です。特に「運命の恋人」ものには頻出です。あまりに多すぎて、私はデジャブシーンにデジャブを感じるくらいです(笑)。とりあえず、運命の恋人もの以外でデジャブが重要な役割を果たしている少女小説として、小林栗奈氏『海のアリーズ』を挙げておきましょう。

     『四月のデジャブ』は、デジャブモチーフを記憶喪失ものに絡めてきた(両者は親近性はありますが、常に連動しているわけではありません)ために、どこか謎だらけのまま話が進んでゆきます。同じ謎物語でも、主人公が傍観者ないし記録者であるミステリーと異なり、まさに当事者として、その謎に翻弄されるあたり、転生ファンタジーに近いテイストがあります。転生ファンタジーというのは、「ごく普通の女子高生が実は超常の力を持つ○○王の生まれ変わりで、××族と戦うべく覚醒することを強要される」というやつです。さらには、ジュブナイルSF(筒井康隆氏『時をかける少女』など)にも似た手触りがあります。ジュブナイルSFの場合、真相はタイムスリップかテレパシーか、そんなのが定番のようです。
     もっとも、『四月のデジャブ』の場合、かなり早い段階でデジャブの謎が解かれ〔20中26〜20下2〕、ファンタジーでもSFでもないことが明らかになります。以後物語は、病院に見舞いに来てくれた名前も知らないリリアンの生徒という、もっと現実的な(そしてちょっと甘い予感をはらんだ)謎とともに、いちごが記憶を取り戻すプロセスという、サイコサスペンス的興味を中心に展開されることになります。

     いちごが記憶を取り戻すまでの過程は、かなり周到に筆が進められていると感じました。21上3までの部分では、彼女のもとに訪れるデジャブは、ただの不思議な体験という位置づけです。過去の出来事は、外から得た知識でしかありません。
     ところが、一絵が登場したとたんに、デジャブが過去の記憶なのだという実感が生まれるわけです〔22上4〜9〕。
     過去の記憶は次第に鮮明に、強くなってゆき〔22下5〜16、23上25〜27、23中9〜13〕、ついには現実と混同をきたすまでになります〔23中19〜23〕。そして記憶を取り戻した〔23下7〕直後に、過去と現在がぴったりと重なる瞬間が訪れる〔24上1〜8〕、という構成になっています。

     少女小説でデジャブといえばロマンチックなもの、と相場が決まっていますが、他のジャンルも含めて見回してみると、「避けられない、繰り返される悲劇」を彩る小道具としてデジャブが用いられることもしばしばです。『四月のデジャブ』でも、いちごが一年前に交通事故に遭ったことが最初のほうで語られます。ひょっとしたらまた彼女は事故に遭遇するのではないか、そして今度は二葉のことを忘れてしまうのではないか、という漠然とした読み手の不安が、記憶を失ってどこか不安ないちごの心情と重なってくれることを今野氏は期待したのかも知れません。
     事実、24上1〜10では、彼女はあわや二度目の事故に遭う寸前まで行ってしまいます。しかしここから時の流れは一年前と袂を分かち、大団円へと向かうわけです。「記憶を取り戻す瞬間」と「過去と現在が重なる一瞬」と「緊張の極点」とを作中でぴたりと一致させようという意図が感じられます。

     構成は巧みです。しかし私は、初読時に不安を覚えました。読者がついて来れるかな、という不安です。
     デジャブものを書く際に、一つ困難な点があります。それは、読者をどう主人公に感情移入させるかということです。主人公が感じている既視感を、読者は共有していません。だから、どんなに主人公が「ほら、この感じ。このシーンに私見覚えがある!」と言っても、読者が食いついてくれるとは限らないのです。私が危惧したのがその点です。
     幸いにも、他の方のブログなどを拝見した限り、私の取り越し苦労に過ぎなかったようで、そこは安心しました。
     
    -5- No.1032 【四月のデジャブ 感想(2/4)】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2007/03/22 15:50
     さて、総論はこのくらいにして、ここから私は「書かれなかったことによって描かれたもの」について論じたいと思います。
     今野氏は、事件の中心人物ではない、その周囲にいる人々の上に流れた時間、というものに自覚的な作家です。『竜のみた夢』237頁14〜15行目、『サカナの天』54頁8行目〜56頁4行目、『遥けき恋文』181頁9行目〜182頁5行目などが典型ですね。『マリア様がみてる』でも、『いばらの森』のせい子と佐織、『パラソルをさして』の弓子と彩子、『降誕祭の奇跡』の真紀など、直接書きはしないものの事件の後の十数年〜数十年の人生に目配りができています。

     『四月のデジャブ』でも、こんな一文があります。
    十ヵ月間、私はただただ眠っていただけで、辛かったり悲しかったり何かと戦っていたのは、私の周囲にいる人たちなのだから。〔20下25〜28〕
     これは直接にはいちごの母について言われたものです。でも、いちごが眠っている間に「辛かったり悲しかったり何かと戦っていた」人物は、他にもいますよね。
     一絵です。

    (0)書かれている事実
     すでにタイムテーブルで書いたように、一絵はいちごの事故の後、
    ①救急車で病院まで付き添い、
    ②毎日見舞いに来て学校であったことを眠っているいちごに語りかけ、
    ③部活に入り損ね、
    ④夏休み前にいちごの母に「もう来ないで」と言われ、以後病院に姿を見せなくなります。
     これだけでも十分一絵の身に起こったドラマに思いを致すことは可能です。でも、『四月のデジャブ』で描かれているものは、これだけにとどまりません。
     テキストから離れ、想像力を自由に働かせて一絵の心情を考察するのは私の手法ではありません。以下、あくまで本文中に存在する手がかりから考えてみます。

    (1)「儚く、切なげで、悲しそう」で「明るくて、感じのいい、元気な子」
     夢の中でいちごに語りかけてくる一絵の声は、「儚く」「切なげ」「あまりに悲しそう」な声です〔19下6〜7〕。
     しかし、看護師の目を通すと、見舞いに来た少女は「明るくて、感じのいい子」〔20中4〕であり、母親から見ると、「元気な姿」〔20下21〕をしているわけです。
     だいぶ印象が違います。
     もちろん、前者は叙情のシーンであり、聞こえてくる声が朗らかだったりしたら台無しです。後者はトリックの場面であり、見舞いに来てくれる少女が二葉そっくりだからこそ意味があるわけです。
     では、それぞれの箇所での効果を追う余り、一絵の性格に破綻をきたしてしまったのでしょうか。
     ここで無批判に「いや、今野先生がそんなミスをするはずがない」と断言するのでは、「痛い信者」でしかありません。本文中の他の描写から補強証拠を探す必要があります。
     初めて見た時、清楚で物静かな印象だったけれど、思った以上に明るく活発な人なのかもしれない。〔22中3〜5〕
     はい、どうやら、今野氏が一絵の性格の二面性について自覚的であったことは間違いないといえそうです。するとさっきの一見矛盾する二箇所の描写も、「単なるミス」ではなさそうです。

    [一絵は基本的には明るくて元気な子なのでしょう。しかし、自分の目の前で親友が交通事故に遭ってしまったわけです。しかもその原因は、ひょっとしたら自分かも知れない。そして親友は、いつ目覚めるともしれぬ眠りについたままです。そのショックやら罪悪感やらのために、切なく悲しい気持ちを抱くに至ったと想像することは容易です。だからこそいちごに語りかける声は切なく悲しげなものになったのでしょう。あるいは、声自体は明るく元気であっても、夢の中のいちごがその奥にある一絵の切なさ、悲しさを感じ取ったのかもしれません。ひるがえっていえば、一絵はそんな気持ちであっても、いちごの母や看護師の前では明るく元気に振舞っていたのかもしれませんね。愛情深く、繊細で、気配りができて、しかも気丈な少女が浮かび上がってきます]
      (続く)
     
    -6- No.1033 【四月のデジャブ 感想(3/4)】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2007/03/22 15:52
    (2)清楚で物静かで明るく活発な人
     これは先ほど引用した箇所です。どうして最初に会ったときには清楚で物静かに見えたのか、ここもちょっと考えて見ましょう。

    [最初の出会いのシーンでは、一絵の隣には二葉がいました。一絵はいまでも平均よりは明るく活発な少女なのでしょうが、二葉のあの底抜けの快活さの前では、やはり物静かに見えてしまうのでしょう。ここで、二葉が一年前の一絵と対比されていることに注目してください。二葉は物語の中では一絵の実の妹ですが、作品の中での位置づけとしては、一年前の一絵そのものなのです。とすると、彼女の最初の登場シーンは、一年前の一絵と一年後の一絵との比較をやっていることになります。この一年で、悲しみや自責の念やいちごの快復を祈る気持ちなどに揺れてきた彼女が、明るさや活発さの多くを削ぎ落とされてしまったのだ、と読むことが可能です]


    (3)他人行儀なお姉さま
     マリア像の前でいちごと出会った時、一絵はちょっと驚いたものの、すぐに平静を取り戻し(ここも味わいのある描写だと思いますが)、「二葉のクラスの―」〔22上20〕と話しかけてきます。さらには、「あなたは? 一緒に部活の見学に行かなかったの?」〔22中6〜7〕という台詞もあります。
     ずいぶん他人行儀ですね。
     もちろん、作品のトリックとしては、ここで一絵が親しくいちごに話しかけてきてはいけないわけです。しかし、一絵の側から見たとき、このシーンは、彼女の心情、さらには、そこに至るまでの一年間の彼女の人生を偲ばせるに十分なだけの重さがあります。

    [もう目覚めることがないかも知れないと思っていた親友が快復して(相当やつれてはいるでしょうが)実の妹のクラスメイトとして学校に復帰したというだけでも、一絵にとっては嬉しかったと思います。そんないちごに、一絵は親しく語りかけたい、さらには抱きしめたいとさえ、思っていたのではないでしょうか。でも、二葉の報告によれば、どうやらいちごは記憶を失っているらしいのです。また、いちごの母親に、「もう来ないで」と言われたことも、一絵の心に引っかかっているかもしれません。だから彼女は、自分の中の溢れる思いを押し殺して、「出会ったばかりの上級生」を必死で演じているのです。いちごの「手をとって歩き出」すのが、一絵にとっては精一杯なのです。痛々しいほどの決意と克己心です。さらにいえば、この一年間で一絵はそれだけの強さを身につけたということでしょうか]


     他にも一絵の心情や過去の葛藤を思わせる言動は至る所に見出せます。二度目の事故を回避した直後の、「『今度は』間にあった」「思い出して『くれた』んだ」などもそうですね。

     上記に記したうち、[ ]内は大幅に私の解釈が入っています。例えば、最初に会ったときに「物静か」に見えたのは、いちごと直面して動揺しているのを隠そうとしていたからだ、とか、他の読み方はいくらでもありうると思います。しかし、少なくとも、『四月のデジャブ』全体を通してみたとき、一絵の書かれざるドラマを「読み取ってね」「読み取ってね」という今野氏の意図は明らかだと思います。
     一絵の一年間の苦しみ、あるいは、各シーンでの一絵の気持ちは直接は書かれていません。しかし、書かないことによって描かれるものも確かにあるのです。
     
    -7- No.1034 【四月のデジャブ 感想(4/4)】 投稿者 : ロアデルは本日も多忙 : 2007/03/22 15:56
     ここからは蛇足になります。やや愚痴めいたことも申し上げてしまうかも知れませんので、以下はお読みにならなくても差し支えありません。

     どうも、『マリみて』ファンの中には、作中のすべての謎が明らかにされなければ気がすまないという方がいらっしゃるようです。でも、『マリア様がみてる』も小説という表現形態を取っている以上、書かない方が作品として優れたものになるという場合も多々あるのです。そういう場合に、「秘密が明らかにされていないのはけしからん」とおっしゃるのは、ややピントがずれているように思います。『四月のデジャブ』にしても、一絵の悩みや葛藤をいちごに告げないこと「自体」がいいのではないでしょうか。「私は一年間これこれこういう気持ちでいたのよ」と言わないことそのものが、彼女が一年間に得た最も尊い気配りだと思います。一絵側の事情は、書かないことが最大の効果を挙げているのです。
     本編で言えば、瞳子の立候補の理由なんてのは、『仮面のアクトレス』の中で明かされては興ざめですよね。あれは、「立候補の理由を書かない」ことによって「瞳子の心の闇の深さを描き出している」のでしょう。仮に将来立候補の理由が瞳子自身の口から明かされる時が来たとしても、それは未来に書かれるであろうその巻のテーマに奉仕するものであって(例えば、瞳子が心を開く過程で、立候補の理由を明かす場面があるかもしれません)、『仮面のアクトレス』の作品としての価値を増減するものではありません。

     第二に、挿絵の功罪について。挿絵は作品のイメージを得る手がかりとはなりますが、下手をすれば読者の想像力を限定してしまう場合もあります。『四月のデジャブ』24頁のイラストをごらんください。いちごを抱きとめる一絵はちょっと驚いた顔をしていますね。
     でも。
     自分の目の前で事故に遭った親友ですよ? 事故の原因が自分にあったかもしれないと一年間悩んでいたんですよ? 母親からは「もう来ないで」と言われたんですよ? ようやく目覚めて学校に復帰した彼女は記憶を失っていたんですよ? それでも、いちごさんが元気でいてくれさえすればいい、と、多分そう自分に言い聞かせていたんですよ?
     そんな彼女が自分のことを思い出してくれたんです。
     歓喜の涙に頬を濡らしながらいちごを抱きしめる一絵を思い浮かべる読者がいてもいいと思いませんか?
     このあたりは、本来、読者それぞれが自分の力で想像すべきところだと思います。挿絵があることによって、かえって自由な想像の余地が狭まってしまっているのではないか、と、私は危惧します。
     
    -8- No.1035 【ロアデルは本日も多忙様】 投稿者 : ほっぷ : 2007/03/25 13:12
    素晴らしい感想ですね、考察のレベル、読み手への配慮素晴らしいです
    書かない方が作品として優れたものになるという場合も多々ある

    確かにそうですね、ある場所で、瞳子の閉ざされた内面について、祐巳の経験との相似性、瞳子を周囲殻見たときの違和感、作者の隠したかったこと、作者の示したかった可能性について、まとめてみたつもりだったのですが、理解されず、自分が短気な物で騒ぎを起こし出入り禁止になってしまいました。当然だけどね。
    論表と直接関係無いため迷惑な話題ですみませんが、ありがとうございます、救われた気持ちです。
     
    -9- No.1040 【四月のデジャヴ】 投稿者 : いわし : 2007/03/28 10:34
    ロアデルは本日も多忙さんの考察は相変わらず凄いですね
    四月のデジャヴを読み返しましたが感じるものが変わってきた気がします。
    たぶん言われて読めたつもりになっているだけとも言える状態なんで
    自分で読み解こうとする姿勢という意味で変われているかは分かりません
    ドッペル階段などは何が書かれているか、おそらくまだ理解できていないのでしょう
    少なくとも言葉に出来るカタチとしては。読み返してみたくなってきました
     
    -10- No.1046 【Re: コバルト4月号+短編「四月のデジャブ」】 投稿者 : 朱夏 : 2007/03/31 22:31
    今野先生はいつも、ストーリープロットに結構複雑な仕掛けを施します。
    しかし雑誌コバルトの場合、厳しいページ数制限もあって、しばしば「書かれていない事」が多く発生します。
    なのに、それも計算した上でひとつの話を創り上げる力量は、全くすごいといつも感心します。

    そしてそれを汲み上げて、詳細に解説なさったロアデルは本日も多忙さま。
    もう、なにも付け加えることはございません。
    まさしく、「物語を三倍楽しむ方法」を見た思いです。(笑)
     
     
    No.1051 【アイコン追加】 投稿者 : 管理人(ワトソン) : 2007/04/03 23:31
    掲示板用のアイコンを追加しました。倍増です(笑)。
    ←これは「さつさつ」でパンダに入った祐巳です。
     
    -1- No.1052 【Re:アイコン追加】 投稿者 : 深月 : 2007/04/04 09:13 :
    どうもです。
    ←何気にコレが好きです(笑)
     
    -2- No.1053 【Re:】 投稿者 : 佐分利奇士乃 : 2007/04/06 20:59 :
    日光と月光、どこが違うんじゃ!……

    ……

    よくよくよく見ると……線対称だ。

    はっはっは……スゲェ

    制作者に感謝です。よろしくお伝えください。

    ……ボタン一つでできるのかな?実は
    追加:2007/04/06 21:00
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